高等養護の変質


http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100427k0000m040092000c.html


この記事で最も驚いたのは、裁判長の説諭の部分ではなくて、


事件の動機を「就職活動がうまくいかず、母親から障害者として就職するよう言われ、プライドが許さないことから人を殺し死刑になろうと考えた」と認定。

の部分だったりする。


自分の息子が就職できない → 不況だけど、障害者枠なら! → 「あんた、障害者として就職したら?」


という流れだったら、度し難い。そりゃ、プライドも許さなくなり、自暴自棄になるだろう。犯行そのものは許されることではないが、背景を考えると、手放しで糾弾することはできなくなる。むしろ、母親を糾弾したくなる。


記事では被告の学歴とかは分からないけど、被告が「広汎性発達障害」と診断されたのは、事件後の精神鑑定の際なわけで、養護学校に通っていたわけではなさそうだ。でも、就職のために、子供を「障害者」にしたがる親が居る、というのは事実のようだ。


以前、ある高等養護学校の人が話をしていたのを思い出す。

この学校では、昨年まで生徒が1学年50人だったのを、今年一気に150人に増やした。教室が足りなくなり、近くの県立高校の跡地に残っていた校舎を使うという。高等養護に行く子供たちだから、どちらかと言えば障害の程度は軽い。卒業後、フルタイムの就職をした人も居るという。


この学校の昨年度の就職率は9割を超えている。不況の昨今、かなりの高率だ。リーマンショック以前は、ほぼ100%だったという。この学校の生徒が一気に増えたのは、まさに就職目当てで、本来のきめ細かな指導が出来なくなってしまったと、その人は言っていた。中には、療育手帳の存在すら知らない親も居たというから、驚きだ。子供に特別支援教育を受けさせようという親が、療育手帳を知らないって・・・どゆこと???


能力的に見れば、本来、高等養護に来なくてもいいような生徒まで受験し、合格する。結果的に、高等養護に行けばもっと伸びた生徒が、養護学校高等部に行くことになる可能性もあるわけだ。果たしてそれでいいのだろうか。高等養護は、普通教育からドロップアウトしてきた生徒の安易な受け入れ先になってはならない。親も教師も、それは肝に銘じるべきだ。


まだ、我が子は中学生。卒業後の進路はまだまだ白紙だ。障害の程度も重く、高等養護に行くことも難しいだろう。ただ、日々の生活が楽しく過ごせるような、そんな進路を見つけたいと心から思う。