「新聞離れ」は、ウソ? ホント?
「新聞離れ」ウソだった? 「読む91%」に違和感の声も : J-CASTニュース
この記事を読んで、その数字に一瞬「?」となった。明らかに「新聞を読んでいる人は91.3%」という数字が、実感として高すぎるからだ。
無理がある「新聞を読んでいる人」の括り方
実際、新聞だって声高に「新聞離れ」を叫んでいるわけで。だから、余計に「???」と思ってしまったのだ。
しかし
新聞に「接触して」(読んで)いる人は、前回(07年)調査より1ポイント減の91.3%(無回答を除く)だった。「毎日読んでいる」(62.7%)から「週に1〜2日」(6.9%)、「それ以下」(5.2%)などを含んだ数字だ。
とあるのを見て、苦笑してしまった。そりゃ、9割という数字も出てくるだろうさ。「それ以下」ってどゆこと? 実際問題、月1回とか半年に1回しか新聞を読んでいない人を「新聞を読んでいる人」と括ることに無理がある。
面倒だけど過去の調査結果も含めて考えてみた
そもそも、この「全国メディア接触・評価調査」とは何なのか。日本新聞協会には
全国の男女個人を対象にした、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、インターネットの5メディアへの接触状況や利用、評価についての調査。多メディア時代における人びとのメディア接触の実態を把握するとともに、新聞や新聞広告が果たしている役割を確認することを目的としています。隔年実施。
と説明されている。なるほど。この調査って、昔は新聞信頼度調査って言ってたものが、名称を変えたものなのか? で、ここに2001年からのデータが置いてあるので、その中の、「毎日読んでいる」人の割合を比較してみた。以前は朝夕刊で分けて調査を行っていたが、今回の調査からは朝刊のみとなっている。地方紙で夕刊の休止が相次いでいるので、調査にならない事情もあったと思われる。
さて、その中の新聞閲読頻度(2001年は新聞閲読程度)の全回答者ベースでの項目を見てみる。
調査年 | 毎日読んでいる | 週に5、6日 | 週に3、4日 | 週に1、2日 | それ以下 | 読んでいない | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2001年 | 69.6% | 9.4% | 7.1% | 5.0% | 2.4% | 5.0% | 5.8日/週 |
2003年 | 69.8% | 7.5% | 7.3% | 5.5% | 3.9% | 5.9% | 5.7日/週 |
2005年 | 68.1% | 7.4% | 7.8% | 5.6% | 3.1% | 7.9% | 5.6日/週 |
2007年 | 66.5% | 6.8% | 8.1% | 6.3% | 3.8% | 8.2% | 5.4日/週 |
2009年 | 62.7% | 7.8% | 8.3% | 6.9% | 5.2% | 9.1% | 5.2日/週 |
これをみると、「毎日読んでいる」人の数は、2年間で4ポイントも落ちている。「読んでいない」人は2001年の5%から9.1%に増加している。平均も5.2日/週に落ちている。
結局減ってるよね?
この数字をどう見たって、新聞離れは進んでいる。これでも「新聞離れは進んでおらず、現状維持!」って言えるのは余程おめでたい人だけだ。気持ち悪いほど、各紙が「91.3%」って数字を見出しに取っている。各紙の記事だけ見れば、「ふうん、新聞ってまだ意外に読まれているのね」と誘導されそうだ。だが生のデータを見れば、そんな気にはなれない。新聞離れが加速している、としか読めないデータなのだ。
J-CATSの記事は、「メディアに関する全国世論調査」とか、「国民生活時間調査」など色々な調査を当たっているから、余計に分からなくなっている。色々な調査を当たるのではなく、同じ調査の数字の変化を見れば、もっと分かりやすいと思うのだが。
とにかく、こういうミスリードを意図的に行うから、またマスゴミって言われちゃうんだよな〜。やれやれ。
2010/06/10追記
LM-7さんのエントリーでは、さらに母集団の構成がいびつであり、高年齢層の割合が高くなっているから、本来の数値よりも数%程度大きく出るはずなのに、2001年調査よりも低下していることを指摘している。
こちらに書かれている内容には全く同意する。特に
それにしてもこの調査結果を、業界の危機を指摘して奮起を促すためではなく、危機を隠蔽しさも安泰であるかのように報告するのはどういう了見なのか。事実から目を反らしても何も問題は解決しない。
という指摘は、本当にその通り。ある意味事実から目を反らさねばならないほど、新聞業界は追い込まれている、ということなのかもしれない。